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「龍を見たおはなし」その2/輪廻転生の巻

 

さて、2012年の5月15日だったか? 僕は朝早く起きて電車を乗り継ぎ横浜郊外の住宅地へ来ていた。夜型の生活で電車嫌いな僕にとっては相当つらい1日のスタートだ。教えてもらった住所のあたりで電話で到着を知らせると、大柄で坊主頭の人物がアパートの玄関先まで出迎えてくれた。想像していたよりも若い。首から数珠を下げどことなく大人っぽい。当時、彼は29歳だったと思う。

 

 

ひととおり挨拶を済ませると、キョトン? とした顔をして僕の顔をシゲシゲと見つめている。一瞬、さらに目がキュっとなったが、また僕の顔を見つめながらしきりに首をひねる叶さん。「今日はわざわざありがとうございます。ま、どうぞお上がりください」 と、ひとまず室内の奥のテーブルへ案内された。

 

「あのう、今日は何かご相談があっていらっしゃったんでしょうか? 悩み事ですか?」 僕に当たり前のことを聞いてくる叶さん。「この人何しに来たんだろう?」と言わんばかりの何だか不思議そうな顔をしている。

 

ギクッ! この人、すでに僕に悩みが無いのを知っている。普通、こういう人へ相談にくる人の多くは「家庭が……」とか「会社が……」とか「不幸が続いて……」とか「守護霊が……」とかなんだと思う。比べて僕の悩みというのは「悩みがないのが悩み」であり、「苦労もしない人生で本当に良いのか?」というところである。

 

しいて挙げるなら、広さ42平方メートルという中途半端なサイズの自宅マンションを全面改装するかどうかという悩みだ。もし今後、結婚するとなれば物も増えるし二人でもキュウキュウの広さになってしまい、せっかく作ったリラックス部屋はただの住みにくい住居になってしまう。つまり大掛かりな改築が無駄になってしまう。なので、50歳の男が今後結婚するのかどうか? 一生アイドリング状態のような生き方で良いのかどうか? この2点をズバリ聞いてみた。

 

「あぁ、わかりました! そういうことでしたらお話できます。う~ん、絵に描いた方がわかりやすいですね」と、何やら太陽とビルの絵、そして屋上に人間が立っている絵をサササーっと描き始めた。

 

前出の浅田さんからは、まず名前と生年月日を書かされると聞かされていたので拍子抜けだ。何も書かされないし、何だか矢継ぎ早に話を進めてくる。そして僕に絵を見せながら解説を始めた。

 

「これは無理に信じなくても結構ですし、おとぎ話と思って聞いてくださいね。まず人間は生まれてくる前はココにいます。そしてこのビルには最初の101号室から屋上まで部屋があり、この中のひと部屋が人の一生です」と、太陽みたいなものとビルのひと部屋を指差す。

 

「これは太陽ではなく、たとえば別の次元のようなもので物質でもありません。本来人間はこの場所にいるのです。そして限られた制約のある次元、つまり我々が生活をしている物質世界であるこの世に生まれてきます。生まれつく家族、生涯を通して出会う人々、何を勉強するかということを自分自身で決めピンポイントで生まれるのです。このビルが100階建だとすると、まず101号室へ生まれ一生を終えるとまた元の場所へと戻ります。生まれる前に課した自分への課題が101号室で出来たなら、次はハードルを上げて102号室へ進みます。人はそうやってビルの上階をめざし登って行くんです。もちろん最初から問題と答えを知っていては勉強になりませんから、全ての記憶を無くした状態で生まれてきます」

 

つまり、「物質社会の人生」というテスト問題を自分の意志で作り、その一生を通してそれらをクリアできるかどうかチャレンジするということらしい。元の世界に戻ったらちゃんと課題を克服出来たかどうか検証し、もし出来ていなかったらもう一度同じような課題を与えて生まれ直し、それが出来たなら次の課題へと進む。人間の本質は「肉体」や「頭脳」ではなく「心」そのものだと僕は思う。肉体は滅びても人間の本質は永遠に残るのだ。つまり死にたくても死ねないのである。

 

死体のことを「亡骸(なきがら)」と呼ぶが、身体(骸)から無くなる(亡)と書く。つまり抜け殻だ。ではいったい何が体から無くなってしまうのかというと、人間の本体がどこかへ行って体からいなくなると僕は感じていた。

 

ふむふむ。前々から僕もそんな感じはしていたが、こうやって図に描いてもらうとわかりやすい。なぜなら、僕は幼少のころから人の死を数えられないぐらい目撃し体験し、「生と死」の意味、「人生の意義」をずっと考えていた。特に生前仲の良かった友達や親類の遺体を前にしたとき「あっ、いなくなってる」と何度も思った。目の前の遺体からその人がいなくなっていた。そして21歳のとき何気ない瞬間、突然脳裏にイナズマが走り一瞬にしてそれを自分なりに理解したという経験がある。

 

「何をたいそうに」と思われるかもしれないが、不完全な自分ではあるけれど「悟った」とか「真理を見た」という言葉以外それに該当する言葉が見つからない一瞬の閃きにも似た出来事。デカい「!!」マークが自分の頭上にボンッと閃いたのだ。それについては僕の1回目のエッセイでちょっとだけ触れている。

 

「普通、私のところへ相談に来る人の多くはこのビルのこのあたりにいる方々です」と、ビルの真ん中ぐらいと1/3ぐらいの位置を指差した。「で、山口さんはどこにいるかというと、ココです」と、ビルの屋上付近に書かれた人間を指差した。

 

「もう今回か次回の人生で、生まれ変わりをしなくても良いくらいの回数の生まれ変わりをしている魂なのです。先ほど何にも苦労しないとおっしゃいましたが、山口さんはハンパない数の生まれ変わりを繰り返している方で、これまでに苦労の積み重ねと孤独を繰り返してきました。だから今回の人生は苦労もしないし孤独とも無縁の人生なんです。人生と家族と人間と美しいものを楽しむために生まれてきました。もちろん結婚もします。そして今回生まれてきた最大の理由は自分の役目を全うするということです。その役目というのはこれまでよりちょっと大掛かりな仕事になるため、これまでの生まれ変わりで触れてきた魂の中でも、より強い魂の結びつきを持つ方々がこれから山口さんの回りに集まってきます。人間の一生に無駄な出会いなど一瞬もありません。

 

ヒーラーという言葉をご存知ありませんか? 人を癒す能力を持っている人で、山口さんの過去生においてそのようなことも多くやっていました。いま回りに集まってくる方の中には潜在的な過去の記憶から、山口さんが癒してくれるのを知っていて癒されにきたりする方も大勢いるんですよ。そのかわりに彼らは無意識の中の意識が山口さんを守り助けてくれてるんです。

 

そんな縁の深い魂の集結は既に始まっていて、2014年まで(正確には2015年の2月まで)には周りの人間が総入れ替えになります。だから今まで親友だと思っていた人が山口さんから遠ざかってしまったり疎遠になってしまっても悲しまないでください。人生の中ではベストなタイミングで出会いと別れが訪れます。去った人は必要の無い人物という意味ではなく、あなたにとって教師の役目を果たした人々が去り、次のステップのために適した教師が集まってくるという意味です。だからどうか悲しまないで欲しいのです。そして自分の心の求める道をそのまま進んでください」

 

じぇじぇじぇ!! この人が語る僕の過去生には思い当たるフシがいっぱいあった。僕には人と話をしているとき瞬時に昔のことを思い出す時がよくあって、その記憶の中では時代も性別も年齢差も今とは違う。たとえばヒゲ面の男と話をしていたと仮定しよう。だけども僕にフラッシュするその相手は時に少年であったり女性であったりという具合だ。例えば自分は焼け野になった街をかけずり回って兵士の手当をする医者であったり、相手は僕が引き取って世話をしている戦争孤児だったり。また時には、江戸の庶民であったり、ネイティブ・インディアンのシャーマンや戦士、ポリネシアン系の神官だったりとバラバラだ。

 

また、この人が言うように、じっさい僕の周りの人間関係が大きく変わっていた。多くの別れがあり、そして数十年ぶりに再会する友達や新しい友達がやたらと増えている。僕の最後の仕事を助けてくれるのか大いに疑問だが、その日の5日前にはMMSのマサキが30年ぶりに現れ、5日後には現在の妻と出会っている。

 

「いや、でもね叶さん。自分はそんな仏様のようなたいそうな人間ではないし、物欲、性欲、ありとあらゆる欲もあり怒りもある。時には人を傷つけてしまったりもする。そんな人間が大きな役目をすることになるなんて心当たりが全くないですよ」

 

「人間から欲を取り除いてしまったなら、それは人間ではないのではありませんか? 先ほどの話とその話は別ものです。山口さんはそのままの生き方で良いのです。全ての人は、その人に合ったそれぞれの役目を持っています。肝心なのは今やるべきことですから、過去の話は頭の隅にでも置いてそのままの生き方をしてください。それが山口さんの役をやるということですから」

 

ふ~む、何か役目があると言われたが正直ピンとこない。が、特に悪い話を聞かされた訳でもないので良しとしよう。その他にも僕とイギリスとの深い関わりや、2017年に財が巡ってくるので必ず受け取るようにという話。どれもこれも誰にも話したことがない、自分でも忘れてしまっていたことなどをズバズバ言われたので、何だか凄ぇなぁ~と思った次第でありました。

 

そしてそれから約4ヶ月半後の、忘れもしない2012年9月3日。このタイトルにもある例のモノと接近遭遇するという大事件が起こったのでした。

 

あん時ゃしょんべんチビるかと思ったよ~かぁちゃん。

 

つづく。

 

 

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CHOP STICK CHOPPERS
住所■東京都豊島区西巣鴨2-22-8-1F
電話■03-3910-8065
休日■木曜日
URL■www.zerochop.com

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チョップスティックチョッパーズ

山口和俊 Kazu Yamaguchi

東京の下町、西巣鴨に居を構えるチョッパー屋の主、カズヤマグチ。愛車は30年来の付き合いになる1941ELナックルヘッド。店名のCHOP STICKという名前の由来は日本人に馴染みの深い「箸」から取ったものだ。

 

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