episode.9

「龍を見たおはなし」その3/接近遭遇の巻

さてさて、ここからが僕に起こった不思議な話の始まりであります。でもこの話。まず一般常識では考えられないことだらけであって、全く何の証拠も根拠も無い話であります。この手の話をすると嫌悪感をあらわにする方も多いので、もしあなたがそのタイプであるなら必ずや不快になること間違いなしですから、ここでお読みになるのを止めてくださいまし。

もしあなたがそれでも読み進めていきたいと思うのなら、どうか最後までお読みくださいね。私たちに「直接」関わりのある大事なお話しが見えてきます。ここにどこまで書いて良いのかはわかりませんが、1人の人間の人生転機の話、または妄想の作り話だと思ってあまり真剣にならず、飲みネタ程度にお付き合いいただければと思います。それではレッツゴー!!

忘れもしない2012年9月3日。僕はいつものように、仕事を終わらせ自宅のベランダでタバコをふかしていました。帰宅するとまずベランダに出て、空や雲を見ながらタバコをふかすというのが僕の日課です。ウチはマンションの5階ですが目の前180度の範囲で視界を遮る高層ビルなどが無く、1kmほど先に池袋駅周辺のビル群が望めるという都会にしては割と恵まれた環境にあります。帰宅するとまずはここでボ~~っとしながらタバコをふかし、仕事とプライベートの区切りをつけるのです。

「今日は雲ひとつ無いなぁ~」

いつもは流れる雲などを見てるのだけど、仕方なく今夜は池袋のビル群を眺めておりました。

「おっ! 雲発見!!」

遠く地平線と平行して細長~く伸びた1本の雲がビルとビルの谷間から見えました。まあ、タバコを吸ってる間の目標が出来たので良しとしましょう。そして灰を落とそうと横のテーブルへ身体をひねった時のこと。ちょうど池袋駅と自宅との真ん中当たり500mほどの距離の上空、地上300mほどの低いところにポカ~ンと一塊の雲が目に留まりました。

「えっ?」

さっきまで雲一つなかった空に、ラグビーボールを縦にしたような楕円形の雲が出現しています。

「あ~~っ!! 雲が出来るとこ見逃した~! しかもすんげーしっかりした雲なのに~」

雲って、観察していると意外と早く消えたり現れたりしてるんですよねぇ。ほんの1分足らずの時間にしては結構なサイズの濃い雲が出来上がっていたんで、見逃しちゃった感はハンパないのです。と、残念がってる矢先、雲の中からこちらを睨む二つの目が!! んで、雲はワシャワシャ~っと一気に、白くて巨大で完全な姿の龍になり僕の目線の高さまでスウ~っと降りてきたのであります!!

いやぁ、この時は本当にびっくらこきました。まるで出来の良いハリウッド映画のCGを見ているかのように、目の前で雲が龍に変身したんですから。しかもその龍はめっちゃデカく、頭のサイズだけでも3~4階建てのビルぐらいの大きさで、腕もハンパないデカさです。そんな巨大なモノが僕から目を外すことなく目の前の上空で動いてるんです。僕はあっけにとられ思わず後ずさりしました。

人間と言うものは不思議なもので、そういう事態に見舞われた時は凄い速さで頭が回転します。まるで事故る瞬間に周りの動きがスローモーションで見えたり、体が吹っ飛ばされてる1秒の間に色んなことを考えられたりするのと一緒です。かのアルバート・アインシュタイン博士は光速に近い動きをする乗物の内部では、時間が伸びるということを式によって導きだしました。同様に、人の思考が高速回転する時、その当事者の感じる時間も長く伸びるのでしょうか? 僕の頭はその数十秒あるいは数秒間のあいだターボブーストのようにフル回転しました。

「待てよ。この龍は俺の頭の中に描いている典型的な龍の姿であり、よく屏風絵に描かれている龍の姿そのまんまじゃないか。ということは何者かが俺の頭の中の記憶を使ってこの龍を見せているんじゃないか? であるのなら、この龍は何者かが作り出した幻影に違いない。うん、この龍は幻覚だ! 何らかの作用で自分の脳が作り出した実際には存在してない幻影だ」

などと考えているあいだに龍はさらに降りてきて、二本の巨大な腕を延ばし全ての指のツメを立て、まるでワシが獲物を捕まえるときのような体勢で僕の目の前まで迫ってきました。

「ああ、俺はこの龍にさらわれてしまう……」

と、幻影だと思いながらも目の前のあまりにリアルな姿に僕は観念しました。特に腕や指、手のひらのディティールは普段あまり意識したことが無いので余計にリアルに感じたのです。だって、あまりにドデカいのでハッキリと見えるのですから……。

すると数十メートル先まで近づいてきた龍は僕に向かって何かを掴むような動作をし、突然頭を右に振りながら空に向い全身で大きく伸び上がりました。そして声こそ聞こえませんでしたが天に向かって吠えたのです。まるでオオカミが遠吠えをしているときのように天に向かって大きく口を開いたのでした。僕は「うわ~~っ」と、その様子をただただ見上げていました。

その瞬間、龍から何かがフッっと抜けてしまったように「吠える龍の形をした雲」へと変化し、そして崩れて流れ消えました。現れてから消えるまで、いったいどのくらいの時間だったのでしょう? 30秒~1分弱ぐらいだったかも知れません。

「ヤっバ~い。生まれて初めて幻覚というものを体験した!」

「僕は人間には見えないけれど、幽霊とは違う人間以外の他の存在が同じ空間に存在していることを経験上知っています。でも想像上の生き物だとされる「龍」はさすがにいないと思っていました。しかし世界中のいたるところで龍の存在が伝説として伝えられ、世界中で似たような姿の生き物が昔から描かれております。ではなぜ世界中に同じような生き物の姿が描かれているのでしょうか? 一つの考え方として、遥か数十万年前に絶滅したとされる恐竜の生き残りが、数百年前の時代までは今でいうシーラカンスのようにわずかながら生きながらえ、それを見た古代の人々が伝説や絵画として残し今に伝わっているに違いない。というのが僕のそれまでの考察でした。まさか、空にあんなものが存在する訳がないと。

では今回はどうでしょう? 考えるに可能性は二つ。「幻影」あるいは「米国先住民にスピリットと呼ばれている自然エネルギー体」。このどちらかを見てしまったのか? あの龍はあまりにも僕の頭の中にイメージしているドンピシャな龍の姿でありましたから、いろいろと考えるまでもなく、「とってもリアルな幻覚体験」ということで自分の中で処理することに決めました。もし認知科学者100人に聞いてみれば、100人とも間違いなく幻影であると答えるでしょう。

「人は見てみたいと望んでいるものを見ることがあり、それは人の脳が作り出す幻影である」と。

幼少の頃に親戚のおじさんから「山口家と八百万の神様」のことを聞いたことがありましたが、僕は全く信じていませんでした。ウチのジイさんは広島で原爆の光を見てしまったがため、20代から死ぬまで病院のベッドの中で暮らしておりましたから、このおじさん(ジイちゃんの弟)が僕の祖父代わりであり、本家の長男である僕へ山口家先祖のことを語ってくれていたのです。

しかし、小五と中二、高二の時に自分だけしか知らない数回の体験や、家族や親戚と一緒に体験した不思議な出来事により、信じる信じないを通り越して実際にそのような存在があるものと認識するに至っております。断っておきますが、僕も家族も宗教とは全く無縁のごく普通の家族です。ですが、龍は恐竜の生き残りだと思っているので、空に龍を見てみたいなどとはこれっぽっちも思っていない人間です。まさか龍はいないでしょう、龍は。生まれて初めての幻覚なのですよあの体験は。ハイ、一件落着。

……と、思ったのもその日かぎり。

そして次の日の9月4日……。

よもやこれが始まりの始まり、終わりの始まりであったとは知る由もございませんでしたとさ。

おっかさ~ん、俺、狂ってなんかないかんね~~~。

つづく。

 

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CHOP STICK CHOPPERS
住所■東京都豊島区西巣鴨2-22-8-1F
電話■03-3910-8065
休日■木曜日
URL■www.zerochop.com

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チョップスティックチョッパーズ

山口和俊 Kazu Yamaguchi

東京の下町、西巣鴨に居を構えるチョッパー屋の主、カズヤマグチ。愛車は30年来の付き合いになる1941ELナックルヘッド。店名のCHOP STICKという名前の由来は日本人に馴染みの深い「箸」から取ったものだ。

 

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