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episode.03

キン消し
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ある研究機関の調査によると、男ってのは実は女よりも感情的な生き物らしい。女の方が感情的やろ? と思いがちだが、男というものは成長の過程で、”男らしくない” という理由から自然と感情を隠すことを学ぶのだそう。そして、その押さえつけた感情が時として “お馬鹿な方向” へと暴発する。

 

振り返ること80′sの小学生だった頃。世は空前の “キン消し” ブーム真っ最中。勇気・友情・努力、の週間少年ジャンプで、奇才ゆでたまご先生が生み出すかっちょいい超人たちが、ガシャポンのゴム人形となり日本中で人気を博した。もちろん僕ら嵐山ボーイズ(生まれ育った京都の嵐山で結成)の間でもそう、町で唯一のスーパー “ライブ嵐山” のガシャポンコーナーはいつもそこいらのキッズで溢れ返っていた。

 

僕は小遣い的事情によりガシャポンを毎回まわすことが出来なかった。そこで “キン消し友達” なるものを作った。このご時世で言うとこの “セフレ” みたいな、不健全かつ良い友達。運動ダメ成績まぁまぁで小太りのキン消し友達、小坂くんは湯水のようにお金を使いキン消し収集に異常な情熱を注いでた。小坂くんと一緒にガシャポンへ行くと、もれなく弱い超人やダブった超人がもらえる。それがキン骨マンやイワオ、アシュラマンだったとしても僕はドキドキだった。

 

ある日、ライブ嵐山に新シリーズが入荷するという情報が入り、ボーイズの間で大きな話題となった。早速噂を聞きつけた小坂くんは「いらない超人やるから先に行って並んどけ!!」と、僕らに指令を出した。キン消しによる上下関係、キン消しによる縦社会の形成で小坂くんがトップに君臨した瞬間だった。しかしその頂点も長くはなかった。ガシャポンコーナーで場所取りをしていた僕らの前に小坂くんはちょっと遅れて現れた。金策してから来たのだろうか? 鬼立ち漕ぎチャリで猛突進、ライブ嵐山前の押しボタン信号を無視した。

 

「ど、どーん!!」

 

次の瞬間、小坂くんが吹っ飛んだ。実際は2メートル位? しかし記憶の中では10メートルは確実に吹っ飛んでいた。チャリはくの字に曲がり、その横に小坂くんがうずくまった。車にひかれてしまったのだ。「こ、小坂ー、大丈夫かー!」。ガシャポンボーイズ全員が慌てて駆け寄った。大人たちは大声で助けを叫び、救急車を手配した。僕は怖くて何も出来ず、完全にビビっていた。「こ、こ、こさかぁ~」。弱々しく呼びかけていると小坂くんはやっとヨロヨロ顔をあげた。頭からは流血、目は涙目、小刻みに震えてる。これはヤバい、誰もがそう思った時、小坂くんは僕に向かい大声で叫んだのだ。

 

「キ、キ、キンけしぃぃぃ~~!!」

 

男とは、いくつになってもお馬鹿である。感情を押さえつけるというのが、実に苦手なのだ。左手首骨折にオデコを6針も縫うという大怪我をしたにもかかわらず、小坂くんはその後もキン消しを収集し続けた。僕も高校生の時に出会ったオートバイで何度も事故り、大怪我をしてもやめられない。つい最近も何故だかわからずにコケてしまった。デモ車両のパワーに興奮しアクセルを開けた瞬間、吹っ飛んだ。右肩からコンクリに落ち、激しい痛みが体中を走った。運転技術を過信し、調子に乗ったわけじゃない。きっと押さえつけてた感情にうっかり体が反応してしまい、それがマシンのパワーに付いて行けなかったのだろう。

 

男とはやはり感情的な生き物なのだ。クールを装うために隠した感情が、”ドキドキ” というキッカケで暴発してしまう。このご時世でオートバイというドキドキするものに出会い、その初期衝動を今も忘れずに、ついドキドキしちゃったってのは実はとても幸せなことなのかもしれない。自分の信じたものに対して常にいつまでも真っ直ぐでいたい。

 

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