episode.246 シュルレアリスム

思考の真の過程を表現する純粋な心的オートマティスム

──ハーレーは素敵だ。ごくごく個人的には「強いアメリカ」を象徴するミッドセンチュリーに生産されたモデル、つまりパンヘッドに対する思い入れがとても強い。

ハーレー初のOHVビッグツインモーターを搭載したナックルヘッドの後継機として登場したパンヘッドは、放熱性の高いアルミヘッドを採用した画期的なモデルであった。ファーストモデルの48年型はナックルヘッド時代のシャシーを踏襲した車両であったが、翌49年に登場したハイドラグライドにはハーレー初のテレスコピックフォークが採用され、リジッドフレームながらも走行性能が飛躍的に向上。58年にはリアサスペンションを搭載したデュオグライド、パンヘッドのラストイヤーモデルである65年型にはセルモーターが組み込まれたエレクトラグライドが発売された。この時点で現代のオートバイの基本構造が完成したというわけだ。歴代ビッグツインの中でもここまでエキセントリックに進化したモデルは他にない。

──時刻は23時。肌を貫くような空気の壁をパンヘッドで突き進む。寒さに音を上げそうな乗り手を尻目に、エンジンは足元で快調に回り続けている。やはりこの季節、ひとにはいささか過酷であるが旧車には最適と言える。トンネルに入ればいっきに空気が変わり、乗り手への攻撃がいくぶん弱まる。小踊りするような暖かさとまではいかないが、さっきまでの刺すような寒さに比べれば少しは息をつくことができる。鼻歌くらいならなんとか歌えそうだ。そろそろ次のパーキングあたりで少し暖を取ろう。ひと息ついたらすぐに出発だ。

このパンヘッドで走る楽しさ、喜びはなにものにも代え難い。もちろん所有欲のようなものも確かにある。しかし走る喜び、操作する楽しさに比べれば、そんなの取るに足らないものだ。

さて。今日はどこまで走ろうか?

ここで一句。
「夢か現か 非合理極まる 絵空事」
少し字余り。


ホットバイクジャパン.com編集部

成田恒一 Kouichi Narita

京都生まれの京都育ち、生粋の京都人という妙なプライドがチャームポイント。HBJ編集部員になり13年目(途中ブランクあり)にしてHBJ.comを立ち上げる。東京に来て25年以上たつも、未だ京都弁が抜けない。趣味は物欲。趣味を超えてその物欲で生きていると言えなくもない、もはやライフワーク。ちなみに特技も物欲である。そして2005年、勢い余って67年式カマロを購入。目下のターゲットはD5。