EPISODE.259.1.1 あとがきのようなもの/序

2016年11月某日、出し抜けに携帯電話が鳴った

2016年6月16日の更新で一旦は終了させていただいたこの「1000 の主張」。連載259回目というなんとも歯切れの悪いところで終了となったわけだが、まことに勝手ながらここでその後日談というか、あとがきのようなものを付け加えさせていただければと思う。しばしお付き合いください。

──2016年11月某日、出し抜けにぼくの携帯が鳴った。

「もしもし、成田くん? ロナーセイジの中村です」

「あ、ご無沙汰しています。すみません、最近バタバタしていまして……。今週末もウチの会社のイベントがあるんですよ」

「それは大変だね。実はパンヘッドのことなんだけど、車検も取れて今キャブセッティングを詰めているところなんだ。また時間を見つけて遊びに来てよ」

「残っていた配線類の作業も終わったんですね。ありがとうございます! なんとか都合付つけて今週中に伺います」

ついに完成か? いや完成したのだ。どうにも実感が湧かないが本当に仕上がったんだ。

数日後、これで年末はパンヘッドと過ごせるぞ、と勢い勇んでロナーセイジへ向った。店に到着するや否や、まずはエンジン始動を試みる。

「Bキャブに換わりましたけど、始動性はどうですか?」

「すごくいいよ。今日の気温くらいだったらチョークを引いて空キック2回、本キック1発でかかるはず」と中村さん。

始動に手こずるイメージが強いBキャブなのに、と半信半疑で言われたとおりキックを踏んでみたら、本当に1発でかかった。拍子抜けするくらい簡単に、あっけなく。しかし何年振りだ!? パンヘッドに火が入ったのは。3年振り? 4年振りか? いやそんなことはどうだっていい、この瞬間がすべてだ。

雲ひとつない抜けるような青空のもと、パンヘッドが軽快にアイドリングを刻んでいる。以前となんら変わらないこの聞き慣れた排気音はパンヘッド復活の狼煙のようなものだ。ぼくの人生に欠けていた重要なピースが、カチッとあるべきところに収まったようなそんな感覚だった。

さぁ走ろう。一旦エンジンを止め、ヘルメットとグローブを車から取り出す。すると中村さんがこう切り出した。「そんなに焦らないでさぁ成田くん、まずは昼飯を食べに行きましょう」。「あ、そうですね。時間も時間ですし、昼飯にしましょうか」。

昼食後、いざ試乗ということでヘルメットとグローブを身につけ、さっきと同じ手順で空キックを2回、そしてイグニッションオンで右足に全体重をかけ本キックと思いきや

──スカッ

まずい、ギア抜けだ! しかし時すでに遅く、リカバリーする間もなく敢えなく空振りしてしまった。キックペダルの上で脛に向って右足首に全体重分の力がかかってしまい、その結果大きく引き伸ばされたふくらはぎに激痛が走った。しばし悶絶するも、気持ちが勝り再びキックを試みるが痛みのためまったく力が入らず、少し休憩することにした。

常にケッチンには気をつけていたが、まさかギア抜けとは。このパンヘッドに乗りはじめてキックのギア抜けなど、ただの一度もなかったのでギア抜けについては完全に無防備だった。時間がたつにつれふくらはぎが腫れ出し、歩くのもままならない状況になってきた。これはかなり深刻な状況だ。おそらくふくらはぎの肉離れだろう。厄介なことになってしまった。せっかくパンヘッドが仕上がったというのに……。

ここで一句。
「狂おしきかな キックで足を 自損事故」
少し字余り。


ホットバイクジャパン.com編集部

成田恒一 Kouichi Narita

京都生まれの京都育ち、生粋の京都人という妙なプライドがチャームポイント。HBJ編集部員になり13年目(途中ブランクあり)にしてHBJ.comを立ち上げる。東京に来て25年以上たつも、未だ京都弁が抜けない。趣味は物欲。趣味を超えてその物欲で生きていると言えなくもない、もはやライフワーク。ちなみに特技も物欲である。そして2005年、勢い余って67年式カマロを購入。目下のターゲットはD5。