EPISODE.259.1.3 あとがきのようなもの/急

こじれにこじれ、ずいぶんとややこしいことになってきた

予想だにしなかったキックスタートでの肉離れ、しかもダブルヘッダー。迎え酒ならぬ、迎え肉離れとはまったくもってお恥ずかしいかぎり。パンヘッドで走りたいという思いが強すぎたばかりの愚行であるが、ほんとうに浅はかだった。

──もう三度目はない、絶対に。筋肉が再生しはじめたところでの駄目押しともいえる再びの肉離れ。右足のふくらはぎは相当なダメージを受けているはずだ。今後キックが踏めなくなる、なんてことにもなりかねない。100%、いや120%完治させる必要がある。

まずは病院へ行こう。前回は素人判断で回復のタイミングを見誤ってしまい、状況をさらに悪化させてしまったわけだから、専門医にちゃんと診察してもらうことが先決だ。そこで僚友に編集部からほど近い整形外科を紹介してもらい、診察を受けることにした。なにやら整形外科の有名な先生のようで、いくつかの著書があり、専門誌の取材も数多く受けているそうだ。

受付で問診票にふくらはぎの肉離れについて記入し、待合室で待つこと20分。まずはレントゲンを撮ることになった。撮影後、処置室の前に移動し順番を待っていると、中から先生の大きな声が聞こえてきた。

「どうしてバレエをさせたんですか! 安静にしてなさいといいましたよね! レントゲンを見てください。ここがね、ここがね、見えますか? ここが骨折しているかもしれませんよ!! お母さんはどうしたんですか? そうですか、仕事ですか。だからね、駄目でしょ! バレエは完治するまで絶対に駄目だからね!!」

カーテンの隙間から少し見えたのだか、相手は8歳くらいの女の子で、どうやら足を怪我しているようだ。その付き添いでお手伝いさんか、バレエの先生が一緒に病院に来ているらしい。その女性と女の子に向って矢継ぎ早にすごい剣幕でまくしたてている。

「まぁね、骨折はしてないと思います、折れてはいないな。でもバレエは禁止だからね。当分はバレエやっちゃ駄目だからね、絶対ですよ!」

なんだ、骨折は脅しだったのか。

そんなことより、これはかなりまずいことになりそうだ。幼女に対してもこの容赦ない指導である。取り締まりといったほうが的確かもしれない。いい大人が同じ肉離れを2回続けてやったなんていう話をしたら、どんなことになるのか考えただけでもそら恐ろしい。なんとか有効な対策はないものかと悩んでいたら、とうとう処置室に呼ばれた。

「骨折はしていませんね。でもあなた少しO脚気味ですね。60歳くらいになったら膝を悪くするかもしれませんよ。肥満には気をつけてください」

オーキャク? ヒマン? それは肉離れとは関係ないだろう。いやしかしここは話に乗ったほうがよさそうだ。

「確かに僕はO脚気味なので、膝を守るという意味で脚の筋肉を鍛えたほうがいいのでしょうか?」

「私は筋肉の話しなど一切していません! ただひとつ、肥満には気をつけてくださいといっているだけです! いいですか? 肥満には要注意です。将来歩けなくなるかもしれませんよ!!」

どうして怒られているのかよく理解できなかったのだが、さっきの幼女の件と考え合わせるに、きっとそういう決まりごとなのだろう。

「分かりました。絶対に太らないようにします。体重維持には細心の注意を払います。それでふくらはぎの状態はどうなんでしょう?」

「肉離れですね。筋肉がパンパンに腫れ上がっていますから、もし足先にしびれが出たりしたらすぐに来てください。手術しますから。筋膜を切り開いて血流を促します。筋膜を切るとね、筋肉がこうプルッと飛び出すんですよ、プルッと……」

ずいぶんとややこしいことになってきた。やはり肉離れは侮れないということか。とにかく肥満には気をつけよう。

ここで一句。
「今回で 終わるつもりが 次回に続く」
少し字余り。


ホットバイクジャパン.com編集部

成田恒一 Kouichi Narita

京都生まれの京都育ち、生粋の京都人という妙なプライドがチャームポイント。HBJ編集部員になり13年目(途中ブランクあり)にしてHBJ.comを立ち上げる。東京に来て25年以上たつも、未だ京都弁が抜けない。趣味は物欲。趣味を超えてその物欲で生きていると言えなくもない、もはやライフワーク。ちなみに特技も物欲である。そして2005年、勢い余って67年式カマロを購入。目下のターゲットはD5。