episode 69 風に吹かれて #02

アメリカの圧倒的な大きさとその強い信念は、
ハーレーダビッドソンというオートバイそのものだ

風に吹かれて考えた。

 

僕がハーレーダビッドソンに乗る意味を……。

 

“風に吹かれて #01″ で振り返った、2008年のHBJ103号でレポートしたカリフォルニアを巡るショートトリップ。California State Route 1、通称「Pacific Coast Hwy(=PCH)」はどこまでも美しく、そしてアメリカの大きさを雄弁に物語っていた。

 

また昔話?
また現実逃避?
いやいや違う。

 

抜き差しならないこの深刻な状況を乗り越えるために必要なステップであり、自分を見直すためにも避けて通れない行程と言える。前回も同じようなことを言った気がするが、それが真実なんだから仕方がない。

 

ではここからはHBJ103号のテキストを抜粋したものに手を加えた原稿を引用したいと思う。

 

──実にアメリカ的な完璧な道程だった。PCHはオールアメリカンロードの名に恥じない素晴らしい道だった。崖にびっしりと根を生やす草の色や、ごつごつと力に満ち満ちた岩肌にリアルなアメリカが息づいていた。よくもこんな断崖絶壁の海岸線ぎりぎりに道を作ったものだ。ガードレールはぽつりぽつりとあるだけで、そんなのないに等しい。まるでガードレールなどという概念自体がこの国では無粋なものであると声高に言わんばかりの眺めが続いている。落っこちれば、どうひいきめに見ても助かりっこない。しかも発見されるどころか、オートバイもろとも崖下に落ちたことさえ誰も気づかないだろう。やれやれ。自己責任を重んじる、いかにもアメリカ的だ。

フリーウェイは遥か地平線まで続くストレートで、ほぼ9割が成り立っている。あとはすごく緩やかなカーブと、ものすごく緩やかなカーブがちらほら。まわりの景色を含めても変化は乏しいが、地球の大きさと自分自身の小ささを思い知らされることになる。東京での暮らしの中で、人の多さにうんざりすることはあっても地球の大きさを感じることなどない。光の速度で情報が行き交う仮想現実の世界はゴルフボールくらいの大きさに縮小された。しかし現実の世界は、とてつもなく大きい。

 

ハーレーダビッドソンを生み、そして育んできた国、アメリカ。この国の圧倒的な大きさとその強い信念は、ハーレーダビッドソンというオートバイそのものだ。

 

広い世界で見る夢は大きい。ベットで見る夢も、目覚めているときに思い描く夢も。狭い世界で生きているといつしか心まで狭くなり、灰色の空の下で暮らしていると、夢に見る空も灰色になってしまう。やがては夢さえ見なくなってしまうだろう。

 

ぼくは思う。好きな道を走ればいいし、曲がりたければ気に入った角で曲がればいい。疲れたら気のすむまで休めばいいし、もちろん北へ行くのも南へ向かうのも自由だ。

世界は美しい。こんなにも美しいのだから。

 

そうしてぼくは人生のねじを巻く。

 

ここで一句。

 

「春なのに 走りたいけど 走れない」

 

次回、#03にてすべてが明かに!