episode 73 風に吹かれて #06

知らない方がよかったのか、
それともやはり知るべきだったのか……

風に吹かれて考えた。

 

僕がハーレーダビッドソンに乗る意味を……。

 

──さて、肝心要の僕の体のダメージは?

 

前回の更新でパンヘッドのダメージは細かく説明したわけが、僕の体のダメージについても触れておいた方がいいだろう。そこに胸が高鳴るような夢やロマンは微塵も含まれていないが、少しくらいの教訓なら得られるかもしれない。バイクではなく体で車に向かっていき、ベッコリと凹むくらいの勢いで衝突したことを考えれば、もちろん無傷というわけにはいかない。

 

事故はまさしく一瞬のことだったので記憶が曖昧のため、ここで子細に説明することは敵わないが、とにかく頭と顔だけは打たないよう、とっさに受け身を取ったことは覚えている。車に激突したのは左肩と左脇腹で、そのあとマフラーサイドに転倒し右肩と右膝を地面に強く打ち付けた。転倒直後は体中が熱くなり、うまく呼吸をすることができず「コレはとてもマズイことになったかも!?」という得体の知れない恐怖心に襲われた。歩道に倒れ込み、まずは心を落ち着かせようと深呼吸を試みる。「はぁ、はぁ、はぁ……」という浅い呼吸から、なんとか息が整った。

 

その途端、体中に激痛が! 「コレはなかり深刻な状況になっているかも!?」。足首、膝、指、肘、肩という感じで順番に体中の関節を静かに動かして点検してみる。部位によっては痛みを伴うが、どうやら骨折はなさそうだ。胸をなで下ろし、それからゆっくりと立ち上がろうとすると左脇腹に激痛が走った。おそらく肋骨にヒビでも入ったんだろう。深く呼吸をすると左胸が締め付けられるように痛む。

 

そのあと到着した救急車に自力で乗り込んで最寄りの病院でレントゲン撮影を行い、骨折していないことが確認できた。しかしその対応に少し疑問が残された。今のレントゲンはデジタル写真でパソコンのモニターに表示されるのだが、担当医師のありえないアナログ具合に面食らった。70才前後のベテラン医師といった風貌ながら、パソコン操作は極めて不慣れのようで、申し訳なさそうに小声で女性看護師に教わりながら写真をチェックしはじめた。別に小声で聞かなくても、すぐ目の前にいる僕に全部聞こえているのに……。

 

10枚以上撮ったレントゲン写真のチェックも、どこかおざなりだったような印象を受けた。そこで一番気になる左脇腹の痛みについて質問してみた。「ヒビが入っている可能性はありますが、それはレントゲンでは確認できません。詳しく調べるためにはCTなどを使って精密検査をする必要があります。しかしヒビが入っていたとしても治療方法は変わりません。ただ安静にしていただくしかないんです」と、担当医師は威厳を取り戻すかのようにトーンを抑えたよく通る声で説明をはじめた。精密検査を受けるためここへきたわけだから調べて下さいと言おうかと思ったが、治療方法が同じならわざわざ調べても仕方がないかと妙に納得。気休めにコルセットのようなバンドを胸に巻いてもらったが、とても息苦しかったのでバンドは巻かないことにした。

 

後日、左脇腹より背中が痛くなってきたので近所の掛かり付けの病院に行ったときのこと。担当医師に救急車で運ばれた病院での所見を伝えた上で背中の痛みを訴えた。すると脇腹と背中を中心に、ここでもレントゲンを撮ることになった。もちろんデジタル写真である。モニターで詳細を検証するまでもなく一目瞭然、見事に折れていた。肋骨が。ポッキリと。素人目に見ても折れていると分かる、それはそれは見事なレントゲン写真だった。ヒビを通り越して骨折。二階級特進モノだな、コレは。シャア少佐がキシリア配下のもとマッドアングラー隊の司令官に就任後、大佐に昇進したみたいなものだ。気になる治療方法は、やはり前出のコルセットだという。結局はヒビでも骨折でも治療方法は同じのようだ。

 

ここで一句、いや、ひと言。
「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを……」

 

もういっちょ!
「私もよくよく運のない男だな」

 

ここで一句。

「骨折と 事実を知って 痛み増す」

少し字足らず。